【プレスリリース】大阪市立自然史博物館:日本産ウスバカゲロウ(アリジゴク)5 新種の発見と記載
このたび大阪市立自然史博物館 松本吏樹郎主任学芸員ら研究チームによる、日本産ホシウスバカゲロウ属の新種の記載論文が、昆虫分類学の英文学術誌「Japanese Journal of Systematic Entomology」において、2021 年6 月30 日に出版されました。
論文タイトルは「Unexpected species diversity of Japanese Paraglenurus (Neuroptera: Myrmeleontidae) based on DNA barcoding and adult and larval morphology [成虫、幼虫形態とDNA バーコーディングから分かった日本産ホシウスバカゲロウ属の意外な多様性]」です。
研究について
概要
日本産のホシウスバカゲロウ属(Paraglenurus 属)について、成虫・幼虫形態の詳細な観察およびDNA 塩基配列の比較に基づいて分類学的再検討を行い、7 種を認めました。このうち5 種は未知の種であったため、新種として記載しました。ホシウスバカゲロウ属はこれまで日本産の2 種を含め、世界で6 種が知られているに過ぎませんでしたが、本研究の結果、11 種となり、その大部分が日本に分布していることが明らかとなりました。これは日本の生物多様性の高さを示す一例と言えます。
本研究で行われた新種記載は日本のホシウスバカゲロウ属としては、1910 年にリュウキュウホシウスバカゲロウ(P. okinawensis)が記載されて以来111 年ぶりとなります。
本研究のポイント
■これまで注目されていなかった幼虫の形態やDNAの塩基配列などの情報を利用して、分類学的再検討を行いました。その結果一度に5種の新種が見つかり、記載・命名を行いました。
■従来ホシウスバカゲロウという種とされていたものには5種が含まれていたことが明らかになりました。そこで1867 年の記載時に指定されたタイプ標本*を確認し、真のホシウスバカゲロウを特定しました。
■各種について成虫・幼虫形態の詳細な比較を行い、同定方法を確立するとともに、多数の標本データと野外観察から各種の生息環境、分布、生活史に関する情報を整理しました。これらの情報は我々を取りまく自然について、理解をすすめる上で、重要な基盤となります。
*タイプ標本:新種記載の際に指定される、その種の基準となる標本。種を代表する唯一の個体をホロタイプとして指定し、さらに同種と認められた個体をパラタイプとして指定することができます。古い時代の記載では複数の個体が、これらの区別なく指定されていました。それらはシンタイプと呼ばれます。ホシウスバカゲロウでは2 頭のシンタイプが存在しました。
関連展示
【ミニ展示】「ホシウスバカゲロウの新種が発見・記載されました」
〇期間:7 月3 日(土)〜8 月1 日(日)
〇場所:自然史博物館 本館 ナウマンホール
施設の基本情報
大阪市立自然史博物館
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL:06-6697-6221
FAX:06-6697-6225
大阪メトロ御堂筋線「長居」駅下車3号出口・東へ800m
JR 阪和線「長居」駅下車東出口・東へ1000m
常設展示観覧料:大人300 円、高大生200 円
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方、市内在住の65 歳以上の方(要証明)は無料。
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